「頑張っているのに年収が上がらない」と悩む人は少なくありません。ただ、その原因は本人の努力不足だけでなく、働いている業界・会社の規模・雇用形態にあることもあります。年収を上げる方法は大きく5つあり、自分の状況と原因に合う方法を1つ選んで始めることが、遠回りをしないコツです。
当記事では、自分の年収の位置の確かめ方、年収を上げる5つの方法、状況別の選び方を、国税庁と厚生労働省の統計をもとに解説します。あわせて、年収を上げたいときにやってはいけないことも整理します。
年収を上げたいと思ったらまず確認すること
年収を上げる方法を選ぶ前に、「今の年収は世の中の中でどのあたりか」と「なぜ上がらないのか」を確かめておくと、打ち手を間違えにくくなります。ここでは、公的な統計を使った位置の確かめ方と、原因の切り分け方を解説します。
民間企業で働く人の平均給与は487万円。まず自分の額面年収と比べる
国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円(前年比1.9%増)です。男女別では男性597万円、女性342万円、雇用形態別では正社員(正職員)559万円、正社員(正職員)以外210万円となっています。
ここでいう給与は、賞与(ボーナス)を含む1年間の支給総額です。比べるときは、税金や社会保険料が引かれる前の「額面年収」(源泉徴収票の「支払金額」)を使いましょう。手取りと比べると、実際より低く見えてしまいます。
| 区分 | 平均給与 |
|---|---|
| 全体 | 487万円 |
| 男性 | 597万円 |
| 女性 | 342万円 |
| 正社員(正職員) | 559万円 |
| 正社員(正職員)以外 | 210万円 |
※1年を通じて勤務した給与所得者の平均。引用:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」(令和8年9月公表)
なお、平均は一部の高い年収に引き上げられやすい数字です。同じ調査の給与階級別の分布では、人数が最も多いのは300万円超400万円以下(構成比15.5%)で、次いで400万円超500万円以下(同15.3%)となっています。平均より低くても、すぐに「自分だけが低い」と考える必要はありません。
年収は「業界」と「会社の規模」で大きく変わる
年収の差は、個人の能力だけでなく、どの業界の、どの規模の会社で働いているかによって大きく開きます。同じ国税庁の調査でも、業種別・企業規模別の平均給与には次のような差があります。
| 区分 | 平均給与 |
|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 854万円 |
| 金融業,保険業 | 726万円 |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 276万円 |
| 資本金10億円以上の株式会社 | 692万円 |
| 資本金2,000万円未満の株式会社 | 416万円 |
※業種別は最も高い2業種と最も低い業種。引用:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査 調査結果報告」
業種によって平均給与に500万円以上の差があり、企業規模でも270万円ほどの差があります。つまり、今の職場で年収が伸びにくいのは、評価や努力の問題ではなく、業界や会社の給与水準そのものが原因である可能性があります。原因が構造にあるなら、同じ職場で頑張り方を変えるより、働く場所を変えるほうが効果的な場合もあります。
1年の昇給額の目安は月1万3,601円(4.4%)。自分の昇給額と比べる
「1年で給料はどのくらい上がるものなのか」は、厚生労働省の調査で目安をつかめます。厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、2025年中の1人平均賃金の改定額は月13,601円、改定率は4.4%(前年は11,961円・4.1%)でした。定期昇給やベースアップなどを合わせた、残業代や賞与を含まない月給(所定内賃金)の引き上げ額です。
| 企業規模 | 改定額(月額) | 改定率 |
|---|---|---|
| 全体 | 13,601円 | 4.4% |
| 5,000人以上 | 16,784円 | 5.1% |
| 1,000〜4,999人 | 15,859円 | 5.0% |
| 300〜999人 | 12,308円 | 4.0% |
| 100〜299人 | 10,264円 | 3.6% |
※常用労働者100人以上の民間企業が対象。企業ごとの1人平均の数字で、個人の昇給額を示すものではありません。引用:厚生労働省「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」(令和7年10月公表)
100人未満の会社は調査の対象に入っていないため、あくまで目安です。それでも、自分の月給の上がり幅がこの水準を下回る年が続いている場合は、次に紹介する「会社の仕組み」や「業界の水準」に原因がないかを確かめるきっかけになります。
年収が上がらない原因は「会社」「仕事・業界」「スキル」のどれかに分けられる
年収が上がらない原因は、大きく「会社の仕組み」「仕事・業界の水準」「自分のスキル・経験」の3つに分けて考えると、取るべき方法が見えてきます。当てはまるものが多い行を探してみてください。原因ごとの詳しい見分け方は、年収が上がらない理由と理由別の対処法で解説しています。
| 原因 | 当てはまりやすい状況 | 向いている方法 |
|---|---|---|
| 会社の仕組み | 昇給の基準があいまい・評価面談がない・業績が伸びていない | 今の会社で交渉/転職 |
| 仕事・業界の水準 | 同業他社に移っても年収が大きく変わらない・業界の平均給与が低い | 転職/仕事・資格を変える |
| スキル・経験 | 担当業務が限られている・評価される実績を説明しにくい | スキル・資格を身につける |
3つのどれにも当てはまり、すぐには本業の年収が動かせない場合もあります。その場合は、副業で収入を足したり、支出を減らして手元に残るお金を増やしたりする方法を並行して検討する手もあります。
年収を上げたい人がやるべき5つの方法
年収を上げる方法は、「今の会社で上げる」「転職する」「年収が高い仕事に移る」「副業で足す」「支出を減らす」の5つに整理できます。それぞれ向いている人、結果が出るまでの時間、注意点が異なるため、まずは早見表で全体を確認しましょう。
| 方法 | 向いている人 | 結果が出るまでの時間 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 今の会社で上げる | 会社や仕事内容に大きな不満がない人 | 次の評価・昇給の時期を待つ必要がある | 会社の制度や業績に左右される |
| 転職する | 業界・会社の給与水準が原因の人 | 転職活動の期間がかかる | 年収が下がる転職もある |
| 年収が高い仕事に移る | 今の仕事の延長では上限が見えている人 | 学習と転職活動で年単位になりやすい | 学習の時間と費用がかかる |
| 副業で足す | 本業の年収がすぐには動かない人 | 収入が出るか・いつ出るかは人により異なる | 就業規則・確定申告の確認が必要 |
| 支出を減らす | すぐに手元のお金を増やしたい人 | 見直した後の支払いから反映される | 年収そのものは増えない |
※かかる時間は方法ごとの傾向を示したもので、統計にもとづく期間ではありません。どの方法も収入の増加を保証するものではありません。
方法1:今の会社で評価の仕組みを確かめ、昇給を交渉する
今の会社に大きな不満がないなら、まず昇給・昇格の基準を確かめ、評価される行動に絞って成果を出すことから始めましょう。転職や副業と比べて、新しい環境に移るリスクがない点がメリットです。
具体的には、次の順番で進めます。
- 就業規則・賃金規程・評価制度の資料で、昇給の時期と基準を確認する
- 上司との評価面談で「次の等級に上がるには何が必要か」を具体的に聞く
- 担当した業務の成果を、数字や事実で説明できるように記録しておく
- 評価の時期に合わせて、記録をもとに昇給・昇格を相談する
一方で、会社の業績が伸びていない場合や、給与の上限が業界の水準で決まっている場合は、どれだけ成果を出しても上がり幅が小さいことがあります。交渉しても変わらないと分かったら、次の転職を検討する判断材料になります。昇給を相談するときの準備や伝え方は、昇給交渉のやり方で例文とあわせて解説しています。
方法2:転職で給与水準の高い会社・業界に移る
原因が業界や会社の給与水準にあるなら、転職で給与水準の高い会社に移ることが、年収を大きく変えやすい方法です。前述の通り、業種や企業規模によって平均給与には大きな差があります。
ただし、転職すれば年収が上がるとは限りません。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によると、転職した人のうち前職より賃金が「増加」した人は40.8%、「減少」した人は31.0%、「変わらない」人は25.5%でした。1割以上増加した人は28.2%です。どのくらい上がれば相場並みかは、転職の年収アップ相場で金額の目安とあわせて解説しています。
| 年齢 | 増加した割合 | 減少した割合 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 55.2% | 17.5% |
| 25〜29歳 | 49.8% | 23.9% |
| 30〜34歳 | 48.6% | 29.0% |
| 35〜39歳 | 43.5% | 23.9% |
| 40〜44歳 | 44.9% | 27.4% |
| 45〜49歳 | 41.1% | 30.1% |
| 50〜54歳 | 29.4% | 42.0% |
| 55〜59歳 | 25.5% | 38.9% |
※令和7(2025)年1年間の転職入職者(前職が雇用者の人)の、前職と比べた賃金の変動。引用:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(令和8年8月公表)
年代が上がるにつれて「増加」の割合はおおむね下がり、50代では「減少」が「増加」を上回っています。転職で年収を上げたいなら、これまでの経験が評価される同職種・近い業界への転職を軸に、内定時の提示年収を比べて判断しましょう。転職エージェントを使うと、求人の紹介や年収の交渉を代わりに進めてもらえる場合がありますが、条件の最終確認は自分で行うことが大切です。転職で年収を上げる具体的な進め方は転職で年収アップする方法で、内定後の条件の相談の仕方は転職の年収交渉のやり方で詳しく解説しています。
方法3:年収が高い仕事に移るためのスキル・資格を身につける
今の仕事の延長では年収の上限が見えているなら、給与水準の高い職種に移るためのスキルや資格を身につけることが選択肢になります。時間はかかりますが、職種そのものが変わるため、長い目で見た年収の上がり幅が大きくなる可能性があります。職種ごとの年収の水準は年収が高い仕事一覧で、資格ごとの年収の目安は年収が高い資格ランキングで比べられます。
選ぶときは、「資格を取れば年収が上がる」と考えるのではなく、次の3点を確かめましょう。
- 求人で、その資格・スキルが応募条件や歓迎条件に挙がっているか
- 未経験からでも応募できる求人があるか
- 学習にかかる期間と費用を、今の生活と両立できるか
学習費用の負担を減らしたい場合は、厚生労働省の「教育訓練給付金」を確認しておくとよいでしょう。雇用保険の制度で、厚生労働大臣が指定した講座を修了すると、受講費用の一部がハローワークから支給されます(対象者や講座には条件があります)。なお、受講料が高額なのに内容が分からない講座には注意が必要です(詳しくは後述します)。
方法4:副業で本業以外の収入を足す
本業の年収がすぐには動かせない場合は、副業で本業以外の収入を足すことも方法の1つです。本業の評価や転職の結果を待たずに始められる点がメリットですが、収入が得られる保証はなく、最初は少額から始まることがほとんどです。
会社員が副業を始める前に、次の2点を必ず確認しましょう。
- 勤務先の就業規則(副業規定):許可制・届出制・禁止など会社によって扱いが異なります。厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)で、副業・兼業についての考え方を示しています
- 確定申告:給与を1か所から受けている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900・令和8年4月1日現在法令等)
所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が別に必要になることがあるため、お住まいの市区町村で確認しましょう。また、公務員は法律(国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条)で兼業が制限されているため、所属先の規定を必ず確認してください。就業規則の確かめ方や確定申告・住民税の注意点は会社員の副業の始め方で、確定申告が必要になる金額の基準は副業の確定申告はいくらからで詳しく解説しています。
方法5:支出を減らして手元に残るお金を増やす
年収そのものは増えませんが、支出を減らすと、手元に残るお金をすぐに増やせます。年収を上げる方法の多くは効果が出るまで時間がかかるため、並行して進めると家計の余裕が生まれやすくなります。
効果が大きいのは、一度見直すと毎月の支出が下がり続ける固定費です。項目ごとの確認ポイントと効果の目安は固定費削減の見直しリストにまとめています。
- スマートフォンの通信料金(料金プラン・契約先の見直し)
- 使っていないサブスクリプション(動画・音楽・アプリ等)の解約
- 保険の保障内容の重複(公的な保障で足りる部分がないか)
- 家賃・車の維持費など、住まいと移動にかかる費用
会社員でも使える節税の制度として、iDeCo(個人型確定拠出年金)やふるさと納税などがあります。iDeCoは掛金が所得控除の対象になる(課税所得がない場合は控除を受けられません)一方、運用する商品によっては元本割れの可能性があり、原則として60歳まで引き出せません。制度の条件は改正されることがあるため、利用する前に公式の情報を確認しましょう。控除の使い方を含めた具体的な方法は、手取りを増やす方法でまとめています。
年収を上げる方法は状況で選ぶ
5つの方法を全部同時に始める必要はありません。年代や今の状況によって、効果が出やすい方法の順番は変わります。ここでは、代表的な状況ごとのおすすめの順番を紹介します。
| 状況 | 最初に検討したい方法 | 並行して進めたい方法 |
|---|---|---|
| 20代〜30代前半 | 転職・スキルの習得 | 支出の見直し |
| 30代後半〜40代 | 今の会社での交渉・経験を活かす転職 | 副業・支出の見直し |
| 50代以降 | 今の会社での評価・役割の見直し | 支出の見直し・副業 |
| すぐに家計を楽にしたい | 支出の見直し | 副業 |
20代〜30代前半は転職とスキルの習得を優先して検討する
20代〜30代前半は、転職で賃金が増加した人の割合が比較的高い年代です。前述の厚生労働省の調査でも、20〜24歳で55.2%、25〜29歳で49.8%、30〜34歳で48.6%が前職より賃金が増加しています。まだ職種を変えやすい時期でもあるため、年収が高い仕事に移るためのスキル習得も検討しやすいでしょう。
30代後半〜40代は今の会社での交渉と経験を活かす転職を比べる
30代後半〜40代は、今の会社での昇給・昇格と、経験を活かした転職を比べて判断することがおすすめです。この年代でも転職で賃金が増加した人は4割を超えていますが、未経験の職種に移ると年収が下がることもあります。これまでの経験やマネジメントの実績が評価される求人に絞って比べましょう。30代の前半・後半で効く打ち手は30代が年収を上げる方法で解説しています。
50代以降は今の会社での役割の見直しと支出の見直しを先に考える
50代以降は、転職で賃金が「減少」した人の割合が「増加」を上回っています。そのため、まずは今の会社での役割や評価を見直すことから考えるのが現実的です。転職を考える場合は、提示された年収と、退職金・企業年金など今の会社に残った場合の条件を比べて判断することが大切です。
すぐに家計を楽にしたい場合は支出の見直しから始める
転職やスキル習得は効果が出るまで時間がかかります。すぐに家計を楽にしたい場合は、見直した後の支払いからすぐに効果が出る固定費の見直しから始めましょう。浮いたお金と時間を、スキルの習得や転職活動の準備に回すと、次の打ち手につなげやすくなります。
年収を上げたいときにやってはいけないこと
年収を上げたい気持ちが強いときほど、勧誘や勢いに流されやすくなります。ここでは、かえってお金や時間を失うおそれがある行動を3つ紹介します。
中身が分からない高額な講座や副業の教材にお金を払わない
「簡単に稼げる」「すぐに元が取れる」といった広告や勧誘を見かけても、中身や解約条件が分からない高額な講座・教材は契約しないようにしましょう。
国民生活センターは、AI講座やSNS運用講座などのビジネス講座に関する相談が増加傾向にあるとして、注意を呼びかけています(令和8年9月16日公表)。副業の紹介や面接と聞いてWeb会議に参加したところ、高額な講座を勧められたといった事例も紹介されています。契約前に講座の内容だけでなく、解約条件や返金の可否を確認し、困ったときは消費者ホットライン「188」に相談しましょう。
借金をしてまで自己投資や副業を始めない
スキルの習得や副業の準備にお金がかかる場合でも、借金をしてまで始めることは避けましょう。収入が増える前に返済が始まると、かえって家計が苦しくなるおそれがあります。学習費用は、前述の教育訓練給付金のような公的な制度や、固定費を見直して浮いたお金の範囲で考えるのが安全です。
次の仕事を決めないまま勢いで退職しない
今の会社で年収が上がらないと分かっても、次の仕事が決まる前に退職するのは慎重に判断しましょう。収入がない期間が長引くと、焦って条件の合わない会社に決めてしまい、かえって年収が下がることがあります。在職中に転職活動を進め、内定と提示年収を確認してから退職を決めるのが基本です。転職で年収が下がりやすいケースと後悔しないための対策は、転職で年収が下がる人の割合と対策で、給料の安さを理由に辞めるか迷うときに確かめることは給料が安いから辞めたいときの判断基準で解説しています。
【まとめ】年収を上げたいならまず自分の位置と原因を確かめよう
当記事では、年収を上げたい人がやるべきことを、国税庁・厚生労働省の統計をもとにご紹介しました。ポイントは次の通りです。
- 民間企業で働く人の平均給与は487万円(国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」)。比べるときは額面年収を使う
- 年収は業界・会社の規模・雇用形態で大きく変わる。上がらない原因は本人の努力だけではない
- 年収を上げる方法は「今の会社で上げる」「転職」「仕事・資格を変える」「副業」「支出を減らす」の5つ
- 転職で賃金が増加した人は40.8%。年代が上がるにつれて増加の割合はおおむね下がる(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」)
- 高額な講座・教材の契約、借金、勢いの退職は避ける
全部を一度に始める必要はありません。まずは源泉徴収票で自分の額面年収を確かめ、上がらない原因が「会社」「仕事・業界」「スキル」のどれにあるかを1つ決めることから始めましょう。原因が決まれば、5つの方法のうちどれから手をつけるべきかを決めやすくなります。
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、収入の増加や特定の結果を保証するものではありません。税金・社会保険・制度の内容は改正されることがあるため、最新情報は公的機関の公式サイトでご確認ください。本記事の情報は2026年10月時点のものです。

