転職で年収が下がる人は珍しくなく、厚生労働省の調査では転職した人の31.0%が前職より賃金が減っています。年収が下がる転職がアリかどうかは、額面の金額ではなく、手取りと生活費、労働時間あたりの賃金、数年後の年収の伸びで判断するのが基本です。当記事では、下がる理由と許容範囲の考え方、下げないための対策、下がったときの住民税・社会保険料の注意点を解説します。
年収を上げる転職の進め方そのものは、転職で年収アップする方法で解説しています。
転職で年収が下がる人の割合
転職で賃金が下がった人がどのくらいいるのかを、厚生労働省の雇用動向調査で確認します。
転職で賃金が減った人は31.0%。そのうち1割以上の減少は21.9%
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によると、令和7(2025)年に転職した人のうち、前職より賃金が「減少」した人は31.0%でした。内訳は「1割未満の減少」が9.2%、「1割以上の減少」が21.9%です。
| 前職と比べた賃金 | 割合 |
|---|---|
| 増加 | 40.8% |
| 変わらない | 25.5% |
| 減少 | 31.0% |
| (うち1割未満の減少) | 9.2% |
| (うち1割以上の減少) | 21.9% |
※令和7(2025)年1年間の転職入職者(前職が雇用者の人)。賃金変動の不詳を含むため、合計は100%になりません。引用:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(令和8年8月公表・表6)
「増加」の40.8%のほうが多いものの、転職した人のおよそ3人に1人は賃金が下がり、5人に1人は1割以上下がっています。年収が下がるのは特別な失敗ではなく、転職でよく起きる結果の一つと考えておくと、落ち着いて条件を比べられます。反対に、どのくらい上がれば相場並みかは転職の年収アップ相場で解説しています。
1割以上の減少は40代までは2割未満。50代から3割前後に増える
年齢別に見ると、「1割以上の減少」は20代〜40代ではどの年齢層も2割未満ですが、50〜54歳で28.3%、55〜59歳で30.6%に増えます。60〜64歳では「減少」が54.3%と半数を超えます。
| 年齢 | 減少 | うち1割以上の減少 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 17.5% | 10.2% |
| 25〜29歳 | 23.9% | 16.5% |
| 30〜34歳 | 29.0% | 19.0% |
| 35〜39歳 | 23.9% | 16.1% |
| 40〜44歳 | 27.4% | 17.6% |
| 45〜49歳 | 30.1% | 16.1% |
| 50〜54歳 | 42.0% | 28.3% |
| 55〜59歳 | 38.9% | 30.6% |
| 60〜64歳 | 54.3% | 47.6% |
※令和7(2025)年1年間の転職入職者(前職が雇用者の人)。引用:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(表6)
30代・40代は「減少」が2〜3割、「1割以上の減少」が16〜19%で、年代による大きな差はありません。若いから下がらないとはいえない一方、1割以上下がる人は50代から大きく増えます。50代以降の転職では、下がる幅を前もって確かめておくことが大切です。
転職で年収が下がる主な理由
年収が下がる転職には、よくある理由がいくつかあります。自分の転職がどれに当たるかを先に確かめておくと、下がる幅の見当がつきます。
未経験の職種に移ると、これまでの経験が給与に反映されにくい
1つ目の理由は、未経験の職種への転職では、前職の経験を前提にした給与になりにくいことです。中途採用の給与は、入社後に任せられる仕事の範囲によって変わりやすく、未経験の場合は育成を前提とした水準で提示されることがあります。
前職の役職や勤続年数も引き継がれないため、職種を変える転職では、一時的に年収が下がる前提で計画しておくのが現実的です。未経験から目指せる職種と入り方は未経験から年収が高い仕事に就くための職種と入り方で解説しています。
規模の小さい会社に移ると、賞与の差で年収が下がりやすい
2つ目の理由は、企業規模による賞与の差です。国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」では、資本金2,000万円未満の株式会社の平均給与416万円のうち賞与は36万円(約9%)ですが、資本金10億円以上の株式会社では692万円のうち159万円(約23%)が賞与です。
※1年を通じて勤務した給与所得者の平均。千円単位の公表値を万円に四捨五入。引用:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査 調査結果報告」(第12表)
月給がほぼ同じでも、賞与の少ない会社に移ると年収が大きく下がることがあります。求人票の月給だけを見て比べると、この差を見落としやすくなります。
残業が減ると、月給が同じでも残業代の分だけ年収が下がる
3つ目の理由は、前職の年収が残業代で膨らんでいたケースです。残業の少ない会社に移ると、基本給が同じでも残業代の分だけ年収が下がります。
この場合、年収は下がっても、働く時間が減っているなら一概に損とはいえません。後述する「労働時間あたりの賃金」で比べると、実は条件が良くなっていることもあります。
50代以降は、役職や定年後の再就職で賃金が下がる転職が増える
4つ目の理由は、年齢です。前述の通り、50代からは賃金が減少した人の割合が増加した人を上回ります。前職で役職手当がついていた人が、役職のない立場で転職すると、その分が年収から抜けることがあります。
60〜64歳の男性では、前職を辞めた理由の57.8%が「定年・契約期間の満了」でした(同調査)。定年後の再就職のように、下がることを前提とした転職も含まれています。
年収が下がる転職はアリ?許容範囲の考え方
「何万円までなら下がってもよい」という決まった基準はありません。ここでは、許容範囲を自分で決めるための4つの物差しを紹介します。
額面の減少ほど手取りは減らない。手取りの差で考える
1つ目の物差しは、額面ではなく手取りがいくら減るかです。年収が下がると所得税・住民税・社会保険料も小さくなるため、手取りの減り方は額面の減り方より小さくなります。
ただし、住民税は前年の所得で決まるため、転職した直後はこの効果がすぐには出ません(詳しくは後述)。手取りの仕組みと増やし方は手取りを増やす方法で解説しています。
生活費と貯蓄から「これ以上は下げられない下限」を決める
2つ目の物差しは、毎月の生活費と、続けたい貯蓄額をまかなえるかです。家賃や住宅費、教育費、保険料などの毎月の支出に、続けたい貯蓄額を足した金額が、転職後の毎月の手取りで払えるかを確かめます。
払えない場合は、その年収は今の家計にとって許容範囲の外です。支出を見直して下限を下げられるかを考えるか、下限を上回る求人を探すかを決めましょう。
労働時間あたりの賃金で比べると、下がっていないこともある
3つ目の物差しは、年収を年間の労働時間で割った「時間あたりの賃金」です。年収が下がっても、労働時間がそれ以上に減っていれば、時間あたりでは条件が良くなっています。
| 前職 | 転職先 | |
|---|---|---|
| 年収(額面) | 500万円 | 450万円 |
| 年間の労働時間 | 2,400時間(月200時間) | 1,920時間(月160時間) |
| 時間あたりの賃金 | 約2,083円 | 約2,344円 |
※計算例。年収÷年間の労働時間で算出し、1円未満を四捨五入。
この例では、年収は50万円下がっていますが、時間あたりの賃金は約260円上がっています。浮いた時間で資格の勉強をする、家族との時間を確保するなど、使い道がはっきりしているなら、選ぶ理由のある転職といえます。
数年後の年収の伸びで、下がった分を取り戻せるかを見る
4つ目の物差しは、入社後に年収がどのくらいのペースで上がるかです。最初の年収が低くても、昇給の幅が大きい会社や、経験を積むと年収の高い仕事に移りやすい職種なら、数年で前職の年収を上回ることもあります。職種ごとの年収の目安は年収が高い仕事一覧で確認できます。
判断には、昇給の基準と時期、評価制度、同じ職種の先輩社員の年収の目安などを、面接や内定後の面談で確認します。「いずれ上がる」という口頭の説明だけで決めず、何年でどのくらいになりそうかを具体的に聞いておくと、比べる材料になります。
年収が下がっても後悔しにくい転職の条件
年収が下がる転職でも、後悔しにくいケースと後悔しやすいケースがあります。違いは、下がることを納得したうえで選んでいるかどうかです。
後悔しにくいのは、下がる理由と得たいものがはっきりしている転職
年収が下がる代わりに何を得るのかがはっきりしていて、下がる額が自分で決めた下限の内側に収まっている転職は、後悔しにくいといえます。
- 未経験の職種で経験を積み、数年後に年収を上げる道筋がある
- 残業や休日出勤が減り、時間あたりの賃金は下がっていない
- 通勤時間や転勤がなくなり、家族の事情や健康を優先できる
- 手取りの減少額が分かっていて、家計の見通しも立っている
後悔しやすいのは、今の職場を早く辞めたい一心で条件を比べずに決めた転職
反対に、今の職場から早く離れたいという理由だけで、提示された年収の内訳や他社の条件を比べずに決めた転職は、入社後に後悔しやすくなります。
辞めたい理由が「給料が上がらないこと」なら、転職以外に今の会社でできることがないかも確かめておくと判断を誤りにくくなります。原因の切り分け方は年収が上がらない理由と理由別の対処法で、今の会社で昇給を相談する進め方は昇給交渉のやり方で、辞める前に確かめることは給料が安いから辞めたいときの判断基準で整理しています。
転職で年収を下げないための対策
年収が下がるかどうかは、内定の条件を確かめる段階でかなり防げます。ここでは、応募から内定承諾までにできる対策を紹介します。
提示年収は「月給・賞与・残業代・手当」に分けて前職と並べる
内定が出たら、提示年収をそのまま比べず、内訳ごとに前職と並べるのが基本です。次のような表にすると、どこで差がついているかが分かります。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 月給(基本給) | 前職の基本給と比べて上か下か |
| 賞与 | 何か月分か、業績でどのくらい変わるか、前年の支給実績 |
| 残業代 | 固定残業代が含まれるか、何時間分か |
| 手当 | 住宅手当・家族手当など、前職にあった手当があるか |
| 退職金・企業年金 | 制度の有無と、勤続何年から対象か |
前職の数字は源泉徴収票と給与明細で確かめ、複数社の条件を同じ表で比べると、下がる転職を避けやすくなります。
初年度の年収と2年目以降の想定年収を分けて確認する
会社によっては、賞与の金額を一定の評価期間の勤務で決めるため、入社1年目の賞与が少ない、または支給されないことがあります。その場合、提示年収が前職と同じでも、入社した年の年収は下がります。
内定時に「初年度の賞与の扱い」と「2年目以降の想定年収」を分けて聞いておくと、1年目だけ下がるのか、ずっと下がるのかを区別できます。
下限を下回るなら、現年収と実績を根拠に年収交渉をする
提示年収が自分の下限を下回る場合は、内定を承諾する前に、今の年収と実績を根拠にして年収を相談する方法があります。条件が書面などで示されたあとのほうが、何をどこまで相談するかを具体的に決められます。
金額が上がらなくても、入社後の昇給の時期や等級、手当で調整できることもあります。交渉のタイミングや伝え方の例文は転職の年収交渉のやり方で、メールで相談するときの文面は年収交渉のメール例文で詳しく解説しています。
年収が下がったときの家計の対策
年収が下がる転職を選んだ場合、税金や社会保険料の仕組みによって、転職1年目は手取りが想定より少なくなることがあります。ここでは、離職期間を空けずに次の会社へ移る転職を前提に、家計で備えておきたい点を紹介します。
住民税は前年の所得で決まる。転職1年目は前職の年収をもとにした住民税が続く
個人住民税の所得割は、前年の1月1日から12月31日までの所得で計算されます。会社員の場合は、6月から翌年5月までの毎月の給与から差し引かれます(特別徴収)。
たとえば2026年10月に年収の下がる会社へ転職した場合、住民税は次のように変わります。
| 住民税が引かれる期間 | もとになる所得 |
|---|---|
| 2026年10月〜2027年5月 | 2025年の所得(前職の1年分) |
| 2027年6月〜2028年5月 | 2026年の所得(1〜9月は前職、10〜12月は転職先) |
| 2028年6月〜 | 2027年の所得(転職先の1年分) |
※会社員で住民税を給与から差し引かれる場合の例。
転職先の年収だけで住民税が決まるのは、この例では2028年6月からです。それまでは、下がった給与から前職の年収をもとにした住民税が引かれるため、手取りが一時的に大きく減ったように感じます。
なお、退職で給与から差し引けなくなった残りの住民税は、原則として市区町村から届く納税通知書で納めます。新しい会社で引き続き給与から差し引くよう申し出る方法や、退職時期によって最後の給与や退職金からまとめて差し引かれる場合もあるため、退職前に会社の担当者に確認しておきましょう。
社会保険料は新しい会社の給与で決まり直す。将来の厚生年金にも影響する
健康保険・厚生年金の保険料は、給与を区切りのよい幅に当てはめた「標準報酬月額」で決まります。転職して新しい会社で加入すると、入社したときの給与をもとに標準報酬月額が決め直されるため、住民税と違って、保険料は下がった給与に合わせて入社直後から小さくなります。
一方で、標準報酬月額は将来の厚生年金の年金額の計算にも使われます。年収が下がると保険料の負担は軽くなりますが、その期間の分の厚生年金は少なくなる点も知っておきましょう。
引用:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(標準報酬月額の決定および改定)
ふるさと納税や固定費は、下がった年収を前提に見直す
ふるさと納税で税金から差し引かれる額は、寄附した年の所得や税率をもとに計算されます。住民税からの控除には住民税の所得割額の2割という上限があるため、前年までの年収を前提に寄附すると、転職した年の所得が下がった分だけ上限も下がり、控除しきれずに自己負担が2,000円を超えることがあります。転職した年は、寄附額を少なめに見積もっておくのが無難です。
あわせて、通信費や保険料などの固定費を見直すと、下がった手取りとの差を埋めやすくなります。
引用:総務省「ふるさと納税ポータルサイト 税金の控除について」
年収が下がった分の公的な補助は、在職中に次の会社を決めた転職では通常受けられない
年収の低下を補う公的な給付に雇用保険の「就業促進定着手当」がありますが、対象はいったん離職して失業給付(基本手当)の受給資格を得て、再就職手当を受けた人です(再就職先に6か月以上雇用され、賃金が離職前より下がった場合)。在職中に次の会社を決め、離職期間を空けずに移る転職は再就職手当を受けないため、通常は対象になりません。
【まとめ】転職で年収が下がるか迷ったら手取りの下限から決めよう
当記事では、転職で年収が下がる人の割合と理由、許容範囲の考え方、下げないための対策と家計の注意点をご紹介しました。ポイントは次の通りです。
- 転職で賃金が減少した人は31.0%、1割以上の減少は21.9%(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」)。50代からは1割以上の減少が3割前後に増える
- 下がる主な理由は、未経験の職種・規模の小さい会社(賞与の差)・残業代の減少・年齢
- 許容範囲は、手取り・生活費・労働時間あたりの賃金・数年後の伸びの4つで判断する
- 内定時は提示年収を内訳で前職と並べ、初年度と2年目以降を分けて確認する
- 住民税は前年の所得で決まるため、転職1年目は手取りが想定より少なくなりやすい
全部を一度に考える必要はありません。まずは今の毎月の生活費と貯蓄額を書き出し、転職後の手取りの「下限」を決めることから始めましょう。下限が決まれば、内定の条件を受け入れるか、交渉するか、見送るかを判断しやすくなります。
転職以外の方法も含めて年収の上げ方を比べたい方は、年収を上げたい人がやるべき5つの方法もあわせて参考にしてみてください。
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、収入の増加や特定の結果を保証するものではありません。税金・社会保険・制度の内容は改正されることがあるため、最新情報は公的機関の公式サイトでご確認ください。本記事の情報は2026年10月時点のものです。

