「会社員は節税できることが少ない」と思われがちですが、年末調整や確定申告で使える控除は10種類以上あります。会社員の節税は、自分が対象になる控除を漏れなく申告することが中心で、まず一覧で当てはまるものを確かめるのが近道です。
当記事では、会社員が使える控除の一覧表、申告の方法、年収500万円での効果の目安を、国税庁の令和8年分の情報をもとに解説します。節税をうたう投資・保険の注意点も整理します。
会社員ができる節税の一覧
控除の一覧と、令和8年分の改正点を先に整理します。
会社員の節税は「控除」を申告して、税金のもとになる所得を減らすこと
会社員の給与からは、経費の代わりに給与所得控除が自動で差し引かれます(年収500万円なら144万円。国税庁 No.1410 給与所得控除)。支出を自由に経費にできないため、会社員の節税は法律で決まった控除を申告することが中心です。
控除には、所得から差し引く「所得控除」と、税額から直接差し引く「税額控除」があります。所得控除で減る税金は控除額×税率で、年収500万円(独身)なら控除額の約15%が目安です(計算は手取りを増やす方法で解説)。
会社員が使える控除の一覧表。年末調整で済むものと確定申告が必要なものがある
主な控除と申告の方法は次の通りです(所得税で税額控除なのは住宅ローン控除だけ)。
| 控除 | 申告の方法 | 対象・上限(所得税) |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年末調整 | 全員。令和8年分は最高104万円 |
| 社会保険料控除 | 給与天引き分は自動。家族の分は年末調整 | 払った保険料の全額 |
| iDeCo(小規模企業共済等掛金控除) | 年末調整 | 掛金の全額 |
| 生命保険料控除 | 年末調整 | 最高12万円 |
| 地震保険料控除 | 年末調整 | 最高5万円 |
| 扶養控除 | 年末調整 | 16歳以上の扶養親族1人38万〜63万円 |
| 配偶者控除 | 年末調整 | 38万円(70歳以上は48万円)。本人の合計所得900万円超で減り、1,000万円超は不可 |
| 配偶者特別控除 | 年末調整 | 配偶者の合計所得62万円超133万円以下で最高38万円(本人1,000万円以下) |
| 特定親族特別控除 | 年末調整 | 19〜22歳の家族1人最高63万円 |
| 障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除 | 年末調整 | 27万〜75万円(区分による) |
| 医療費控除 | 確定申告 | 10万円を超えた分(最高200万円) |
| セルフメディケーション税制 | 確定申告 | 対象の市販薬1万2,000円超の分(最高8万8,000円) |
| 寄附金控除(ふるさと納税) | 確定申告(ワンストップ特例なら不要) | 寄附額から2,000円を引いた額(上限あり)。住民税は税額控除 |
| 雑損控除 | 確定申告 | 災害・盗難などによる損失 |
| 特定支出控除 | 確定申告 | 給与所得控除の2分の1を超えた特定支出 |
| 住宅ローン控除 | 1年目は確定申告、2年目から年末調整 | 税額控除。年末のローン残高等の0.7% |
※令和8年4月1日現在法令等。控除額は所得税のもので、住民税では一部の控除額が異なります。引用:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)」の各控除のページ
年末調整の控除は、勤務先に出す申告書に書けば精算されます。確定申告が必要な控除は翌年に自分で申告し、還付申告は翌年1月1日から5年間さかのぼって提出できます(国税庁 No.2030 還付申告)。控除ごとの条件と金額は手取りを増やす控除の解説で、年末調整・確定申告別に整理しています。
令和8年分は基礎控除と給与所得控除の最低額が上がり、申告しなくても所得税が減る
令和8年度税制改正で所得税の基礎控除は、合計所得金額489万円以下(給与だけなら年収665万5,556円以下)なら104万円、489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円になりました。給与所得控除の最低保障額も65万円から74万円に(年収220万円以下の人に関係)、扶養親族などの所得要件は58万円以下から62万円以下に上がっています。住民税は基礎控除が据え置きで、後の2つだけが令和9年度分から反映されます(総務省「令和8年度地方税制改正(案)について」)。
差額は12月の年末調整で精算され、当サイトの試算では、年収500万円(独身)の所得税は改正前の基礎控除(68万円)で計算した場合より年約2.9万円少なくなります。引用:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」、国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」
年末調整で使える節税と効果の目安
勤務先に書類を出すだけで受けられる控除です。効果は年収500万円・独身・東京都の会社員での当サイトの試算です。
iDeCoは掛金の全額が控除。年収500万円で月2万円なら年約3.6万円減る
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金の全額が所得控除になる私的年金です(国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除)。年収500万円の会社員が月2万円(年24万円)を出すと、所得税と住民税で年約3.6万円減る計算です。掛金の上限は会社員で月2.0万〜2.3万円、2026年12月分からは企業年金と合わせて月6.2万円になります(厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」、国民年金基金連合会「お手続きのご案内」・2026年10月時点)。
原則60歳まで引き出せず、商品によっては元本割れの可能性もあるため(iDeCo公式サイト)、生活費の備えを残して無理のない掛金にしましょう。
生命保険料控除は最高12万円、地震保険料控除は最高5万円。上限を超えて払っても控除は増えない
平成24年以後に契約した保険は、一般・介護医療・個人年金の3つの枠があり、それぞれ年8万円を超える保険料で上限の4万円、合計で最高12万円です。令和8年分以降は、23歳未満の扶養親族がいると一般の上限が6万円(年12万円超の保険料で上限)になり、合計12万円は変わりません(国税庁 No.1140 生命保険料控除)。
地震保険料控除は、地震保険の部分の保険料が年5万円までは全額、5万円を超えると一律5万円です(国税庁 No.1145 地震保険料控除)。住民税の控除額は、生命保険料が各最高2.8万円・合計7万円、地震保険料が2分の1・最高2.5万円です(東京都主税局「個人住民税」)。年収500万円で減る税金は、生命保険料の一般の枠を上限まで使って年約4,800円、地震保険料が年5万円で年約5,000円です。控除のためだけに保険に入ると、保険料の負担のほうが大きくなります。
扶養控除・配偶者控除は、令和8年分から家族の所得の要件が62万円以下に上がる
扶養控除は16歳以上の扶養親族1人につき38万円(19歳以上23歳未満は63万円、70歳以上は48万円・同居の親などは58万円)、配偶者控除は本人の合計所得金額が900万円以下なら38万円(70歳以上の配偶者は48万円)です(国税庁 No.1180 扶養控除、No.1191 配偶者控除)。
令和8年分から、扶養親族や控除対象配偶者になれる家族の合計所得金額は62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)になりました。配偶者の合計所得が62万円超133万円以下(給与だけなら年収207万円以下)なら配偶者特別控除(最高38万円)、19〜22歳の子どもなどが62万円超123万円以下(給与だけなら年収197万円以下)なら特定親族特別控除(最高63万円)を受けられます(国税庁 No.1195 配偶者特別控除、No.1177 特定親族特別控除)。家族の収入が変わったら、扶養控除等(異動)申告書を見直しましょう。
また、学生の子どもの国民年金保険料など、生計を一にする家族が負担すべき社会保険料を自分が払った場合は、その全額を自分の社会保険料控除に加えられます(国税庁 No.1130 社会保険料控除)。
確定申告で使える節税と対象になる人
年末調整では受けられず、対象になる年に自分で確定申告をすると税金が戻る控除です。
医療費控除は家族の分を合わせて10万円超から。市販薬が多い年はセルフメディケーション税制と比べる
医療費控除は、本人と生計を一にする家族の1年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満なら、その5%)を超えた分を、最高200万円まで差し引ける制度で、保険金や高額療養費で補填された分は除きます(国税庁 No.1120 医療費控除)。年収500万円で家族の医療費が年15万円なら、控除額は5万円、減る税金は年約7,500円です。
健康診断や予防接種を受けている人は、対象の市販薬の購入費が1万2,000円を超えた分(最高8万8,000円)を差し引くセルフメディケーション税制も選べます。医療費控除とはどちらか一方だけで、選んだ後は変えられないため、両方で計算して大きいほうを選びましょう(国税庁 No.1129 セルフメディケーション税制)。
ふるさと納税は寄附額から2,000円を引いた額が戻る。上限を超えると自己負担が増える
ふるさと納税は、寄附額から2,000円を引いた額が、上限の範囲内で所得税と住民税から控除される自治体への寄附です。上限は年収や家族構成で変わり、超えた分は自己負担です(総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」)。上限の考え方は手取りを増やす方法で解説しています。年収別・家族構成別の目安はふるさと納税の上限を年収別にまとめた記事で確認できます。
寄附先が5団体以内ならワンストップ特例制度で申告を省けますが、確定申告をする年はふるさと納税も申告書に含めます(総務省「ふるさと納税ワンストップ特例制度」)。
住宅ローン控除は年末残高の0.7%。1年目だけ確定申告で、2年目から年末調整
住宅ローンでマイホームを取得すると、年末のローン残高等の0.7%を所得税から直接差し引ける住宅ローン控除を受けられることがあります。上限や期間は住宅の種類と住み始めた年で変わり、会社員は最初の年分だけ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で受けられます(国税庁 No.1211-1 住宅借入金等特別控除)。
特定支出控除は会社員の経費。給与所得控除の半分を超えた分だけ差し引ける
特定支出控除は、仕事のための一定の支出が給与所得控除額の2分の1を超えたとき、超えた分を確定申告で差し引ける制度です(国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除)。対象は通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得費・単身赴任の帰宅旅費と、図書費・衣服費・交際費など(合計65万円まで)の7種類です。
勤務先などの証明が必要で、年収500万円なら72万円(給与所得控除144万円の半分)を超えた分だけが対象のため、使える人は限られます。
会社員の節税で自分が使えるものを見分ける方法
使える控除は、家族構成・住まい・その年の出費で変わります。
まず源泉徴収票で、受けている控除と払った所得税を確かめる
源泉徴収票には、1年間の所得税(源泉徴収税額)のほか、生命保険料・地震保険料の控除額、控除対象扶養親族の数、住宅借入金等特別控除の額が書かれています。保険料を払っている・家族を養っているのに欄が空いていれば、申告漏れの可能性があります。
減らせる税金は、自分が払っている税金が上限です。当サイトの試算では、年収500万円(独身)の会社員が払う税金は所得税約9.2万円・住民税約24.3万円の年約33万円のため、「年40万円の節税」のような額は控除をいくら増やしても届きません。
状況別に使える節税の早見表。当てはまる行の控除を確かめる
当てはまる行の控除を申告しているか確かめてください。
| 当てはまる状況 | 確かめたい控除 | 申告の方法 |
|---|---|---|
| 生命保険・地震保険の保険料を払っている | 生命保険料控除・地震保険料控除 | 年末調整 |
| 老後資金を積み立てたい | iDeCo(NISAは控除ではない) | 年末調整 |
| 16歳以上の子どもや親を養っている | 扶養控除 | 年末調整 |
| 19〜22歳の子どものアルバイト収入が多い | 特定親族特別控除 | 年末調整 |
| 配偶者の給与収入が年207万円以下 | 配偶者控除・配偶者特別控除 | 年末調整 |
| 家族の医療費が年10万円を超えた | 医療費控除 | 確定申告 |
| 対象の市販薬を年1万2,000円超買った | セルフメディケーション税制 | 確定申告 |
| 返礼品のある寄附をしたい | ふるさと納税(寄附金控除) | 確定申告かワンストップ特例 |
| 住宅ローンでマイホームを買った | 住宅ローン控除 | 1年目は確定申告 |
| 自費の資格取得・単身赴任の帰省費が多い | 特定支出控除 | 確定申告 |
※令和8年分。配偶者の年収は給与だけの場合の目安
年収500万円なら、iDeCo月2万円で年約3.6万円、保険料控除は数千円が目安
控除ごとに減る税金の目安は次の通りです。
| 節税 | 条件 | 減る税金の目安(年額) |
|---|---|---|
| iDeCo | 掛金 月2万円 | 約3.6万円 |
| ふるさと納税 | 上限内で年3万円を寄附 | 2万8,000円(返礼品あり) |
| 医療費控除 | 家族の医療費 年15万円 | 約7,500円 |
| 地震保険料控除 | 地震保険料 年5万円 | 約5,000円 |
| 生命保険料控除 | 一般の保険料 年8万円以上 | 約4,800円 |
※当サイトの試算。年収500万円・独身・40歳未満・東京都の会社員。令和8年分の所得税(税率5%、復興特別所得税を含む)と住民税(所得割10%)で計算し、ほかの控除は基礎控除と社会保険料控除のみ。ふるさと納税は所得税と住民税から控除される額の合計
税率が高い年収の人ほど、同じ控除額でも減る税金は大きくなります。なお、令和8年分は年収665万円前後で、額面が増えても手取りが減ることがあります(手取りを増やす方法で解説)。
節税で注意したいこと(NISA・投資・副業)
「節税」として紹介される制度や商品には、税金が減らないものや損失のリスクが大きいものもあります。
NISAは税金が減る制度ではなく、運用益が非課税になる制度
NISAは、通常は約20%の税金がかかる運用益(売却益・配当・分配金)が非課税になる制度です(金融庁「NISAを知る」)。iDeCoと違って投資額は所得控除にならず、その年の税金は減りません。元本割れの可能性もある、将来に向けた資産づくりの制度です。
「節税になる」とうたう投資用マンションや保険は、減る税金より損失のリスクを先に確かめる
投資用マンションや保険を「節税になる」と勧める勧誘があります。国民生活センターは、家賃保証があると勧誘されて購入した投資用マンションが赤字になった事例などを紹介し、注意を呼びかけています(国民生活センター「20歳代に増える投資用マンションの強引な勧誘に注意!」(2019年3月28日公表))。
所得控除で減る税金は控除額×税率にとどまります。ローンの返済や空室、値下がりで損失が出れば、減った税金より負担が大きくなることがあります。仕組みとリスクを説明できない契約はその場で決めず、困ったら消費者ホットライン「188」に相談しましょう。
副業の赤字で給与の税金を減らす方法は、雑所得では認められない
「副業の赤字で給与の税金が戻る」という話もありますが、雑所得の損失は、給与所得など他の所得から差し引けません。損益通算できるのは不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の損失だけです(国税庁 No.2250 損益通算)。
会社員の副業の多くは雑所得にあたります。開業届を出しても、事業所得かどうかは社会通念で判定され、取引を記録した帳簿書類の保存がなければ原則として雑所得です(国税庁 所得税基本通達35-2)。経費にできる範囲は副業の確定申告の解説、始め方は会社員の副業の始め方で確かめてください。
【まとめ】会社員の節税はまず年末調整の控除漏れを確かめよう
当記事のポイントは次の通りです。
- 会社員の節税は、控除を漏れなく申告すること。所得控除で減る税金は控除額×税率
- iDeCo・生命保険料控除・地震保険料控除・扶養控除などは年末調整で申告できる
- 医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン控除の1年目・特定支出控除は確定申告で申告する
- NISAは税金が減る制度ではない。「節税」をうたう高額な投資・保険は損失のリスクから確かめる
まずやる1つは、今年の年末調整の書類に、保険料の控除証明書と家族の状況を漏れなく書いて出すことです。医療費の領収書やふるさと納税の受領証は、1か所にまとめておきましょう。
税金を減らす余地には限りがあるため、手取りをさらに増やしたい方は、昇給交渉のやり方や転職で年収アップする方法、年収を上げたい人がやるべきことも参考にしてみてください。支出の側から手元のお金を増やすなら、固定費削減の見直しリストから始めるのも一つの方法です。
投資には元本割れのリスクがあり、運用成果は保証されません。投資判断はご自身の判断と責任で行ってください。税制・制度の内容は改正されることがあるため、最新情報は金融庁・国税庁等の公式サイトでご確認ください。本記事の情報は2026年10月17日時点のものです。

